〈ムザヒーブ〉

……と〈タブヒーブ〉という固有名詞が中篇「象られた力」には出てきます。作品世界に出てくる惑星とその衛星。これの語源を書いた本があったはず、と実家の本棚をあさって見つけ出したのが『幻想の中世』(ユルジス・バルトルシャイティス西野嘉章訳、リブロポート)。

アルメニアでは装飾師という語に花[dzaghig]の語源を持つザキゴグ[dzaghgogh]という言葉が対応しており、(中略)回教的言語では金地、つまり文字通りには金箔師をさすムザヒーブ[mudhahhib]という表現がそれに対応しており、したがってそれはペルシアをはじめとするイスラム世界に広く見られる装飾頁の、群青に隣り合った金地を直接に連想させる。同様に写本頁、欄外装飾、文様にもタブヒーブ[tadhhib]という特殊な言葉がある。(156頁)

むかしは飛もこういう気取った真似をやっていたんですね。いえ、意味あり気なだけで実質をともなっていません。まあ20代半ばですから。若い……(ためいき)。ちなみにこの書物は、

キリスト教一色に染まっていると思われた西欧中世の本体に、実は古代地中海世界イスラム、インド、東アジアの諸文明から流れ出た異国的な支脈が、さまざまな形で貫入している(訳者あとがき)

ことを膨大な実例で示そうとしたもので、つまり「象られた力」の主題とけっこう関係が深いものでした。