『ラギッド・ガール』その2

SFマガジンの二色ページで紹介してもらっています。ようやく〈廃園の天使〉の二冊目が刊行されます。
『グラン・ヴァカンス』を発表した頃から今年にかけて、だいたい年1作のわりあいで〈SFマガジン〉に掲載された中短篇4作に、新作中篇「魔述師」(約200枚)を加えました。
〈廃園の天使〉は、三つの長篇といくつかの中短篇で構成される予定で、今回の収録作はすべて「『グラン・ヴァカンス』以前」を扱っています。つまり『グラン・ヴァカンス』の続編ではなく、この長篇の周辺機器、といった感じ。『グラン・ヴァカンス』というメインにこれらのコンポーネンツを加えることで、ようやくひとつの「まとまった作品」として読んでもらえるものと考えています。
それはたんに、あの仮想世界をささえる技術基盤がどうなっているか、現実世界はどのような社会か、を解説するだけのものではないし、外伝や番外編という意味でもありません。
『グラン・ヴァカンス』で書きとめた設定をなにひとつ変えず、その上で、あの作品の最大のモティーフをひっくりかえそうと試みています。
音楽でいうと、ようやくこれで、第一主題を奏し終わった……という感じ。まだ第二主題にすら、入っていません。ただまあおおかたの曲がそうであるように、第二主題は第一主題において準備されているわけで、『ラギッド・ガール』でもって〈廃園の天使〉のスタートが切れたな、という感慨はあります。(<悠長なことを)
『空の園丁(仮題)』を待っておいでの方にはたいへん申し訳ありませんが、これでも4年間、『象られた力』の改稿も含め、死に物狂いで書いてきました。
まだちょっと、お待ちください。
(つづく)