メモ

書きかけでほっぽってあったメモ。

伊藤計劃『ハーモニー』について。
以下は初読後のメモ。まだ読み返していないので。
立場上、国内SFのレビューは年末以前には発表しないことにしていますが、これはただのメモであって、レビューではありません。
読み間違いは沢山あると思います。コメントは歓迎します。

 かつて文学は、リッチなスタンドアロンたる「人間」を描くものだった。
 しかし伊藤計劃の『ハーモニー』以後、この見解は少なからず修正を迫られるだろう。この作品で、演算能力とアプリケーションとストレージの大半をクラウドに明け渡した「シン・クライアントとしてのヒト」がはじめて――と同時に極限まで――描かれてしまったからには。
 ヒトが、ネットワークのクライアントであることに価値をみとめられ尊ばれる世界。本書で描かれる高度保健福祉社会の様相は、奇妙なくらい企業内LANに似ている。ヒトはリソースとして尊ばれ、約束事を遵守することで尊ばれ、己を損なわないことによって尊ばれて、堅固なセキュリティに――文字どおりの〈アンチ・ウィルス〉に――浴することができる。そうしてある日、とあるチキンなシステム管理者が、へぼいセキュリティ・アップデートをすべての端末に一斉にかける――ひとまずこれはその経緯を記した小説として読むことができる。経緯を記した人物、霧慧トァンの一人称をかりて「シンクライアントとしてのヒト」――いやさ、「ブラウザとしてのヒト」の内部で何が生起するのかを、克明に描き抜いた小説として読むことができる。
 どのような理由で伊藤計劃がetmlを採用したかは知らない。どんなつもりであんな結末をつけたのかも知らない。(敢えて言うが、私は『ハーモニー』をマスターピースだと思っているわけではない。)
 しかし――作者の意図がどうであれ――そうするのだと決め、このように書き抜いたことによって『ハーモニー』はたんにジャンルの傑作であることを越え、どえらく長いリーチを獲得したと思う。なんならそれを文学の新しい地平と言ったっていい。

これ以降はまだプラズマ状態。
どうでもいいけど、ミァハって、黒「よつば」だよね。