東京二日目

この日のメインイベントは午後5時から。
さすがに前夜の酒は残っていないものの、全体的にぐったり。10時ごろ秋葉原のホテルを出て(このへんずいぶん変わりましたねえ)、ヘッドホンの品ぞろえがよいお店(まえもって当たりをつけてありました)を2軒ほど下見。本番は次の日ということで。
銀座へ出て、奥さんの人と娘向けにおみやげを購入。うーむやはり体調がいまいち。通り道にあった小さなスペイン料理のお店にはいってランチ。前菜のガスパチョでなんとか人心地を取り戻しました。メインの煮込みものはいまいちかな(自信なし)。ホテルに戻ってちょっとうとうとしたら、もう時間。おもむろに起きだして電車。新橋で降り、17時に汐留の高層ビル群へ。うわあ、地上から見ているだけでもすごい眺めです。都会だなあ。
テレ朝ビルの隣りのロイヤルパークタワーに入り、エレベータを待っていると「飛さん」と声をかけられました。巽孝之小谷真理の両氏です。
そう。今夜は「科学魔界」のための巽×飛対談を行うのでした。

「科学魔界」対談

「科学魔界」は、慶応義塾大学文学部教授にして第21回SF大賞受賞者である巽孝之氏が1970年に創刊したSFファンジンです。飛が本格的に創作に手を染めたのは大学の後半(70年代末)ごろからですが、当時「科学魔界」は評論・創作の両面にわたって、SF界の最先端をいっていた屈指のファンジンのひとつでした。
どういうわけだか飛もデビュー前後に「科学魔界」の会員になっているんですよね。
「科学魔界」の前号が出たのは2001年ですが、今年は5年ぶりに発行するとのことで、ネタのひとつとして飛にお声がかかったもの。
タワーの24階がホテルのロビー&ラウンジになっていて、そこでお茶を飲みながらの対談。陪席に小谷真理氏、「魔界」編集部のT氏、記録補助者として慶応の院生お二人でテーブルを囲んで、いろいろお話ししました。
とはいえあの巽氏を相手に丁々発止のお話しなどできるわけもなく、話題は飛の作品をめぐるものが中心(助かった……)。あとはスタニスワフ・レムについて、など。
それにしても「ラギッド・ガール」って、すでに存在していた言葉だったんですね。びっくりしました。巽氏によればフランク・ボーム『オズのつぎはぎ娘』の原書名が(あるバージョンでは)ラギッド・ガールなのだそうです。
巽氏は飛がそれを引用したものという前提で話しかけてこられ、そうではないということに、むしろ驚いておられました。ラギッドネスは〈廃園の天使〉の根幹をなすモチーフ(というかモチーフのさらに以前にあるもの)であって、連作の(時系列上では)最初の位置にくる「ラギッド・ガール」では、それをいろいろな角度からかみしめようとしたものなのでしたけれども。いや正直な話、「ラギッド・ガール」が英語として成立するのか自信がなかったのでほっとしたですよ。
小説内に生起する「怪物」について巽氏はエイリアンととらえての切り口から話をされるのに対し、飛は実作者としてまだ別の意味をお話ししたりもしました。
あとは「接続された女」や「レムのやばい不品行」「レムのむずむずについて」などいろいろに話題が飛んで、けっきょく一時間半くらい話をしたと思います。
「魔界」は今年中には刊行される予定とのことですので、興味のある方は、またご覧になってみてください。(刊行されたら、ここでも入手方法をアナウンスしましょうか。)
おはなしが終わったのは19時前。席を立ってふり返ると臨界のウルトラゴージャスな、ありえないような夜景に絶句。
飛の住む島では産婦人科医が確保できなくてみんな大弱りなんですが、都会と地方の格差をひしひし感じました。
あとは、別ビルの地下にある台湾点心のお店に全員で移動。別の方も1名加わって(ことし医学系のサイエンス本を出版される予定があるそうで、目次をチラ見させてくださいましたが、とてもアレなものでした(褒め言葉))。
おつゆたぷたぷの小籠包やむちむちの大根餅とかおいしい点心をたらふくいただき、えんえんと懇談。とてもここに書けないような話しもしたような気がします、って前日と一緒じゃないか。
で、SF者の通例として蛍の光が流れるまで長居、ってこれも前日と一緒ですね。
お店を出て、巨大ビルの谷間の広場を歩いていると、でかい亀の背中に遭遇。
いやほんとうにあの噴水は必見ですね。
えーみなさん、ほんとうにありがとうございました。「魔界」が仕上がるのを楽しみにしております。