「ロード・トゥ・パーディション」(サム・メンデス)
ブルーレイ・レコーダは大活躍中(にこにこ)。
録画してあるだけの番組がもう観きれないほど溜まっています(にこにこにこ)。
10、11月は良映画がぞくぞく放送されるのでいろいろたのしみ。(にこっ)
そんななか、スターチャンネルで掲題の番組がポール・ニューマン追悼記念として放映されました。これを録画するためにだけ、あわてて加入。(お金がもたないので11月には離脱する予定。)
これは大好きな映画で、どうしてもハイデフで観たかった。
本作については作家の佐藤哲也氏による文章をご紹介しておきましょう。これにつけくわえるものは何もありません。凄い映画。
小説や映画をひとに紹介するとき、ストーリーやあれこれの仕掛け(あるいはそれを土台にしたいろんな蘊蓄とか解釈とか)を話すことが多いように思われますが、でもそんなの何の意味もないよね、と思っています。なので一回観た映画を家で観るときは、音声を消していることも多いです。
コンラッド・ホールによる本作の撮影は(たぶんこれが彼の遺作で)本当にもうとにかく素晴らしい。一カット一カットにとらえられた様々な光と影、質感が、フレームの中にぎっちりとした密度を構成し、それがフィルム送りによってゆっくりと(ときに激烈な速度で)変転していくのを、ただ追いかけるのみ。名優の朗読の、声音(こわね)の味わい、滑舌の自然さ、ふかい呼吸のこころよさをそのまま映像にすればかくもあらん、と感じられます。
イリノイ州ロックアイランドの底冷え。指先がちぎれそうに痛く、靴底一面がおそろしく冷たくなり、肉の奥までも深く深く差し込んでくる冬の寒気、その表現が圧倒的*1。
公式ホームページのプロダクションノートを読むと、サム・メンデスはその寒さや雨雪の表現を非常に重要な、本作のテーマと不可分な要素ととらえていたようで、それでこそのあの画面か、と思わされます。と同時に、これは先入観なのかも知れませんが、この監督が舞台演出家でもあることと縁無きことではないようにも思いました。演劇の演出においては舞台装置をどのように造形するかについて、おそらく映画以上に自覚的でなくてはならないはずで。
しかしあの配役、ダニエル・クレイグだったのか。「カジノ・ロワイヤル」とはぜんぜん違ってるけど、これもいいなあ。
*1:いや別に冬山遭難のシーンがあるわけではありませんよ。街中だし、吹雪いたりもしません。でも寒いんですよ