冬の旅

レコード芸術」(音楽之友社)9月号はカルロス・クライバーの追悼特集。まあ、それはさておき、256ページからの連載『舞台裏の神々ーー指揮者と楽員の楽屋話』がむちゃくちゃ面白いので、クラシック好きかどうかにかかわりなく、もうぜひ読んでいただきたい。
謹厳実直なドイツ音楽芸術の守護神というイメージで売られてきた(ドイツ・グラモフォンでは華麗で金満体質なカラヤンと好対照の二枚看板だった)カール・ベームの行状がえんえんと暴露されるのだが、

「ゴッチュ君、日本人はわしの指揮棒を欲しがって仕方ないんだが、それで一儲けできないもんかの」

すばらしすぎ(笑)。だれか此奴にヤフオクを教えてやれ(死んでます)。ところがこんなのは序の口だ。小説書きをこころざすみなさん、小ネタの宝庫です、これ。
あと指揮界の逸話魔神オットー・クレンペラーの新ネタも。

声楽家の)フィッシャー=ディースカウは、指揮者を志したとき、そのデビュー演奏会にオットー・クレンペラーを招待したことがある。それに対してクレンペラーは、当日ショルティの歌う《冬の旅》の演奏会の先約があるからといって断った。

やっぱり腕を上下にぐんぐん振って歌うんだろうな……。