『PLUTO (1) (ビッグコミックス)』浦沢直樹
以前書店で雑誌版を1回だけ立ち読みしたのですが、そのときこのアトムの造形をいきなり見て、ふおおと驚きました。好印象だったので購入。
「地上最大のロボット」は飛にとって初読時の印象の強さで生涯ベスト5には食い込むと思います。
これを最初に読んだのは、小学校の運動会のときでした。たぶん学校主催のではなくて、地区の運動会。集落対抗戦で、当時住んでいたのは松江の中でもさらに田舎でしたからこれは一大イベントであります。ぼんやり小学生だった飛は(たぶん洟でもたらしながら、ふらふらうろうろしていたのだと思います)うち捨てられていたマンガの本を拾ったのでした。それが「地上最大のロボット」だったのです。
おぼろな記憶では、それはなにか雑誌の付録のような体裁だったと思います。
トラウマになるほどの面白さでした。内容が怖くてトラウマになるのではなくて、「物凄く面白いものを見てしまった」という一個の「体験」を身体の中に埋め込まれてしまい、それ以前と以降とで違う自分になる、という意味。拾ったものだから今ここで読んでしまわないと読めない、という切迫感もあったのでしょう。運動会などそっちのけで校庭の隅でむさぼるようによみふけりました(はぐちゃんがキリンを飲み込むような読みかた、かな)。
ノース2号が何本もの腕をひろげるシーン、ゲジヒトの胸から突き出される無数の銃口、そして無慈悲なまでのボラーの強さ。脳みそをひきずりだされるような体験でした。いま思えば、他人の評価も前評判もなく、突如天から降るようにしてこの作品に出くわせたのは、途方もない幸運だったのでしょうね。