『夕凪の街 桜の国 (アクションコミックス)』ふたたび

文化庁メディア芸術祭大賞を受賞したとのこと。
33ページ最後のネームばかりがあちこちで引用されていますが(たしかにそこには匕首のような凄みがあります)、飛はこれと93〜95ページの独白ネームとが一対になっていると思っています。前者による徹底的な否定とそれさえも圧倒する後者の肯定は、2004年にこそ描かれなければならなかったことで、それがこの作品の核心でしょう。この作品がはげしい(そう、はげしいといいたい)アクチュアリティをもってわれわれをゆさぶったのは、惨状を直接描かなかったとか二世、三世の問題を取り上げたというような、紹介記事的スペックのゆえではないはずです。
そうして、もちろんヒロシマという問題をくまなく考え抜くことなしに、この一対がうまれることはなかったでしょう。
それにしても28〜29ページの背景の美しさ、早朝の空気感、その光をなんと言いあらわしたらいいのでしょう。