「二人称現在」（ダリル・グレゴリィ）

〈ＳＦマガジン〉2007年1月号に掲載された短篇。ちょっと押し入れを整理していて、なんだか読みたくなったので読んでみました。同誌掲載の海外短篇を読むのはずいぶん久しぶりな気が……だめじゃん。
意思決定の主体は意識ではない、という科学トピックをふたひねりしたメインアイディア。作者は、それをもうふたひねりくらいして舞台を仕立てています。緻密にきっちり書かれていて、飛はもうちょっとゆるい仕上げが好みかな*1、と思いつつ読み進めていくと、なかなか複雑な味わいのある絶妙のラストが待っているのでした。飛の年齢はアリスのほうに近いのでいろいろしみじみしましたが、若い読者もやはりしみじみするのではないかと。
日本を舞台にしたとすると、この最終場面の小道具はなにを持ってくるべきかと考えていて、ふと、この作風――とがった科学アイディアと普通の人間の日常的情感のインタラクション――は、菅浩江氏のいくつかの名作を思わせるものがあるように感じました。

*1:ただしこれは翻訳を読んでいる以上仕方がないのかも。