「アフォーダンス-新しい認知の理論 (岩波科学ライブラリー (12))」佐々木正人

アフォーダンス-新しい認知の理論 (岩波科学ライブラリー (12))
アフォーダンス関連書を読むのは、実ははじめて。それで仮想現実・AIものを書いていたんかい!とお叱りの向きもあるかとおもいます。だれよりもじぶんが叱りたい気分なのでご容赦を。(もともと下調べが行き届かないたちです。)
このところ、じぶんがうまく言語化できなかった感覚をうまく表現してくれるものに立て続けに出会っていますが、これもそのひとつ。「ラギッド・ガール」の執筆にスティーブン・ピンカー心の仕組み~人間関係にどう関わるか〈上〉 (NHKブックス)」の出版が間に合って、やっとこすっとこ書き上げた記憶がありますが、そのときにすでに本書はでていたし、これを読んでいたら楽だったろうなと思います。(しかしそのばあい、あのような仕上がりにはならなかったのかもしれません。)
アフォーダンス」という考え方の提唱者はジェームズ・ギブソンというアメリカの知覚心理学者。1940年代に空軍の知覚研究プロジェクトに参加したことを契機に、「見ること」が網膜やそこにできる像からはまったく説明できないことをみずからの実験でひとつひとつ確認し、視覚を説明するあたらしい理論を30年がかりで生みだしていくことになります。そのエッセンスを乱暴にまとめると「情報は中枢での処理の結果うみだされるものではない。知覚する主体(あなたやわたし)は、環境にあらかじめ内在する情報(主体にとっての意味=アフォーダンス)を探索している。」ということになるのでしょうが、この一文ではニュアンスが台なしになってしまう。1200円とわりあい安いですし、100ページほどのブックレットですから、SF好きは読んで損がないと断言しておきます。
アフォーダンス」を知るとものの見方が変わって見える、といわれているようですが、飛にとっては、上に書いたように、うまく言語化できなくてもどかしい思いをしていたあれこれがすっきりした!という気持ち良さを得られました。(たぶんそういう人は多いと思います。)
2003年のSFセミナーの席上で、自作について「『居(お)り心地』について書きたい」と話したのですが、それはギブソンの言うstimulus array、ないしambient arrayに近いもの……それを視覚以外の感覚にも広げたものとして言おうとしていたのではないか、と今考えています。
なんにせよ、「空の園丁」に間に合ってよかった。