「星窓remixed version」

「SFJapan2006SPRING」に掲載されます。約50枚。一般書店での発売は、8日(水)以降となるそうです。
以前書いたとおり旧作「星窓」の改稿版。掲載にあたっては、本作の背景について小さなコラムを同誌に書いていますが、スペースが足りなかったので、その全長版をここでお目にかけます。

『象られた力』は90年代前半までの初期作からベストアルバムを編む*1、というつもりで制作したが、あの四作に、もしもう一編追加するとしたらこの「星窓」になったことだろう。そういう意味で、この「星窓remixed version」は受賞アルバムのボーナストラックと考えてもらってよい。
せっかくの機会なので、「remixed version」と銘打ち、『象られた力』に収録しなかったすべての初期作の断片を差し挟んでみた*2。すなわち「ポリフォニック・イリュージョン」「異本:猿の手」「地球の裔」「いとしのジェリイ」「夢みる檻」である。といってもべつに超絶技巧を使っているわけではない。ちょっとした工夫をすれば*3、こういう変更はわりあい簡単にできるものなのです。
ただひとつ芸があるとすれば、読み進めるうちに本作が「星窓」ではなくて別の作品のリミックスに読めてくる、というあたりだろうか。そのあとに、さらに二つだけ小さな趣向を加えてみた。
こういう趣向は「星窓」初読の人にはじゃまなだけだろうが、今後初期作を再発表する予定はないので、これが最後のお披露目になるはずだ。ということで、どうか勘弁してください。
「星窓」は20代の作品なので、わりと甘々なところがある。相当こっぱずかしいが、一方でまあ許容範囲かなと思う気持ちもある。飛もむかしは「残酷」一辺倒ではなかったのだ。その甘さはそこなわないようにしたつもり。お楽しみいただけたら、うれしい。
日本SF大賞に対する答礼演奏として襟を正しつつ、いままで自分が書いた作品すべてへの挨拶として心から愉しんで書いた。
こんな個人的な企画を許容してくださった〈SFJapan〉編集部に心から感謝する。

お読みくださったらうれしいです。

*1:というか、なんとか00年代に通用する作品を選ぶ

*2:ただし初期作の原文そのままではない。雰囲気が回想されるという程度である。

*3:今回のばあい、オリジナル・バージョンに登場した「姉」の設定をちょっといじった。