十色の紙テープ
春は別れと出会いの季節。
飛の職場でも辞令を手にして、やって来る人と出てゆく人が行き交っています。
きょうは港の岸壁に行って、島を離れてゆく人たちを見送ってきました。すごい人だかり。港の建物のデッキは三階まで人が鈴なりです。どうも中学の先生が本土に赴任していかれる模様。飛の住んでいる島でも、うんと田舎のほう、合併する前までは村だったところから大挙して(春休みですからね)見送りに来られたようでした。
吹奏部の子たちが「世界にひとつだけの花」を吹いていたり、あちこちで万歳をやっていたり、エールを叫んでいたり、校歌を歌ったり。あたりは、ほろり、しんみり、泣き笑いのムード。飛の職場から転出する人たちも、あいさつの時花束を手にしてちょっと言葉に詰まられたり、こっちももらい涙だったり。この島で産まれた赤ちゃんをだっこして転勤していく人もいます。
やがて銅鑼が鳴り、出港の時間になります。
デッキに立つ女先生はハンカチで顔をおおっておられます(花粉症ではないと思います、たぶん)。飛の職場の人も花束を大きくふっています。
我々の持つ紙テープがするすると引き出され、伸び、つぎつぎと切れていきます。建物のデッキからも子供たちが紙テープをどんどんと投げますが、おおくは届かず落ちていきます。何百本もの色あざやかな紙テープは、白いフェリーの船体にことのほかきれいに映えていました。
水産高校の実習船が大小二隻、港の片隅からすべりだしてきて、フェリーの巨体に伴走し、乗組員が手を振ります。
あとで岸壁から海をのぞきこんでみました。
透明な早春の水の中に、切れ切れのテープがたくさん光っていました。