「よつばと! 8 (電撃コミックス)」(あずまきよひこ)
あいかわらずの面白さでたいへん満足しました。
「よつばと!」の大きな魅力のひとつが緻密に書き込まれた背景にあることはいうまでもありませんが、今回はそれが極まった感があります。映画で人物がいない風景が雄弁に物語ることがありますけれども、その域に余裕で達しているかんじ。たとえば台風の回の、窓に打ちつける風雨の様相、厚い雲で暗くなった(でも日中の)空。*1学園祭の回では「射的」という看板の質感に感心しましたし、なんといってもお神輿を下から見上げる大ゴマ! まさに「これはすごい」。
これらのオブジェクトにほどこされた陰影は、ほとんどフリーハンドの平行線なのですが、たいへんなリソースが振り向けられていると思いました。ファミレスの床の質感とか、とーちゃんの書斎の畳の目とか、いろいろ眼福があります。
毎年恒例の「よつばと!カレンダー」は、本物の写真の中によつばの絵を違和感なくはめ込んでいるのですが、作者にとっては、この町の質感をありありと描き出すことこそが、かくされた主題なのではないでしょうか。
しまうーは今回も絶好調です。6組でクレープを買ってきたシーン、口元あたりにさりげなくくすぐりが仕掛けてありました。